東急目黒線 品川区に位置する「西小山駅」

西小山は古い町並みや商店街を大切に残しつつ、新しいお店やイベントにはとても寛容なエリア。
駅から東西に延びるノスタルジックな西小山商店街は、コンパクトながらも連日地元の人の買い物スポットとして賑わいます。
駅から歩いて行ける範囲にはセンスが輝る個人店が多く、飲食店、ギャラリー、古着や銭湯など一日では周り尽くせない程に魅力的な個人店が目白押し。
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活気立つ西小山商店街から一本外れて、駅から3分ほど歩いた通りに、
私が通い詰める八百屋さん「808plus(ヤオヤプラス)」があります。

私がお店を知った経緯は、職場がたまたま近くにあり、仕事帰り「あのお店は一体何屋さんだろう?」と、お店の光に導かれるように入ったことがきっかけでした。
その日から、お店の前を通ると、いつも笑顔で挨拶をしてくれる店主の秋元さんやスタッフの皆さんに、すっかり気を許し、毎日足を運ぶように…
買い物を通した雑談タイムが、一人暮らしの私にとって毎日の楽しみで、
休日でも自宅から10km自転車で走って買いに行くほどお店と働く人のファンなんですっ!

看板は控えめで、一見 ”普通” の八百屋さんにも見えますが、実は誰もが知っている有名番組や雑誌にも多数取り上げられ、人気のカフェや飲食店にも野菜を卸している、既に地域を超え名を馳せている話題店。
・・・ですが、これまでお店や野菜について取り上げられることが多く、秋元さんご自身の過去や想いについては多く語ってこなかったそうなんです。
どうしたら、こんなに話題になり、多くの方に愛される八百屋さんをやってこれたのでしょうか…?
そこで!今回は「ヤオヤプラス」店主の秋元さんにフォーカスを当てて、八百屋になるまでのこと、食やお客さんに対する想いなどを、赤裸々に語っていただきました。

文章:airi 写真:myourenjar 構成:myourenjar
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野菜の奥深さに魅了されて、気づいたら
───秋元さん(店主)は元バンドマンだと伺いました。八百屋さんで働き始めたきっかけを教えて下さい。
秋元さん:「けっこう遡るけど、学生時代から20代にかけてバンドを組んでて、特に学生時代はバンド漬けの毎日で。就職活動中、自分は働きたい職業が定まらない中、周りでは ”とりあえず” と就職先を決める友達が多かったんだけど、それが自分には納得出来なかった。
悩んだ末『自分がおじいちゃんになった時に八百屋さん、お肉屋さん、魚屋さんをやっていたら将来食いっぱぐれることはないだろう』と、生きるために必須な食周りの職業に就きたいと思ってね。

まずは八百屋さんで働いて野菜の事を学び尽くしてから、お肉屋さんか魚屋さんで働こう!って考えて
八百屋さんで働き始めたら、想像以上に野菜の世界が奥深くて…
夢中になって学んでいたら、気づけば15年間、八百屋さん一筋で働いてます。(笑)」

「学生時代は『食』にも無頓着だったし、食材に『旬』があるなんてこと気にしてなかった。
だからこそ覚えることが多くて大変だったけど、初めて知る食材や品種、美味しいものとの出会いに感動して、トマトひとつとっても種類がめちゃくちゃあるから、見たことないトマトに出逢うたびに『何これ!味も食感も全然違う!!』って、毎日が刺激的で楽しくて仕方なかったよ。
知識を得るためには、かなり貪欲で…発送されてきた段ボール内の野菜の説明書は全部持ち帰って家で復習してた。」

「食べること」は、楽しいこと
──私自身ヤオヤプラスさんでよく買い物させて頂きますが、作りたいメニューを伝えると適した食材を親身に教えてくれますよね。元々料理は得意だったんですか?
秋元さん:「いや、八百屋さんで働くまでは料理は全然やらなかったよ。

日々お客さんとお話しする中で『この食材どうやって使うの?』と、質問されることが多くて
その質問に責任をもって応えたい!と思って…
色んな食材を片っ端から食べて、実際に自分で調理して…お客さんに『こうしたら美味しかったです』って伝えることを何年も繰り返したら、気づいたら料理も好きになってたんだよ。
料理へ関心が広がったのも【もっと貪欲においしいものを知ってほしい】って思いが原動力になってる。 」

「安く、おいしい食材を提供することはもちろん大切だけど、安さで他の八百屋さんと競うのではなくて、
ヤオヤプラスに食材のことを聞いたら間違いないって、食全般に関してお客さんに信頼を置いてもらえるようなお店で在りたいかな。」
野菜をただ売りたいわけじゃない
───スーパーと八百屋さんの違い、ヤオヤプラスさんだからこそできる買い物の楽しみ方があれば教えてください。
秋元さん:「スーパーと八百屋さんの違いは、スーパーは『消費者が選ぶ場所』
八百屋さんは『消費者と販売側が選ぶ場』だと、思うかな。

「八百屋での買い物の醍醐味は、見ているだけじゃ分からない食材の特徴や適した調理法を知れること。
迷ったときは、気軽に旬の食材、購入した食材のおすすめレシピを聞いてもらえると嬉しいです。
あとは、一人暮らしの方でも利用してもらえやすいように、食べきりサイズの野菜や、ひとつから購入可能なものも沢山置いてます。
他のスーパーで買い物してから、2軒目でふらっと来て頂くのも大歓迎です~!」

『食材をただ販売する』という枠を飛び超えて、お客さんの口に入るまで、美味しいものに出合うきっかけ与え続けてくれる秋元さん
そのスタイルは
【もっと貪欲に美味しいものに出合ってほしい】
という、一貫した熱い想いが土台にあるからこそ、お肉やお魚など、食のジャンルが何であれ
秋元さんの切り口で、お客さんの「美味しいものをもっと知りたい」という好奇心を、きっと、変わらず刺激し続けてくれるのだろう…
ヤオヤプラスにainiko
───今後、西小山の地域にとって、どんな存在でありたいですか?
秋元さん:「気軽に『美味しいもの』に出合えるきっかけで在りたい。学生時代は食に無頓着だったけど、美味しいものと沢山巡り合えたことで、より人生の楽しみの幅が広がったから。
あとは、お客様との日々のコミュニケーションは変わらず大切にしていきたいな。
自分が商店街育ちだからこそ、心地よい距離間でお互い見守るような関係を築いていきたいなって思うよ。」

___働き始める理由が何であれ、働く価値に意味を見出し、好奇心を燃やし続け、人一倍の努力と誠実なコミュニケーションの先に唯一無二のヤオヤプラスのスタイルが誕生。
そのスタイルにたどり着くまでの努力は想像し難いものですが、終始印象的なのは
食に関することが「好き」「楽しい」という働き始めてから変わらない、食への純粋な好奇心。

食への並々ならぬ愛が、日々の接客や食材への接し方に表れ、その積み重ねが愛されるお店創りに繋がっていることを、知ることが出来た貴重な時間でした。
私にとってヤオヤプラスは、雨の日も風の日も、落ち込んでいる日でも
「つい寄りたくなってしまうお店」
今回の取材を通して、その ”つい” は、偶然ではなく、秋元さんの現場での圧倒的な場数と経験があるからこそ、いつ行っても、お客さんが安心して時間を過ごせるのだな、と必然的に自分がお店に引き寄せられていることに深く納得しました。
このお店で見る光景、そして買い物時間は当たり前の日常に「+α」の幸せをくれます。
みなさんも、ヤオヤプラスの愉快な皆さんや、珍しい野菜に会いに行ってみては??
808plus(ヤオヤプラス)
住所:東京都品川区小山6丁目7-3
TEL:03‐5498‐0439
Instagram:808plus