東急東横線 白楽駅から歩いて5分ほど。
六角橋商店街を抜けた大通り沿いの一角に「菓子工房 雫」があります。
鮮やかな青い壁が印象的な店内には、温かみのある木のカウンターと カラフルで可愛らしいステンドグラスたち。そんなほっとする空間で、カウンター越しに笑顔で迎えてくれる方が オーナーの阿部直美さんです。


デザイナーとしての感性が光る空間づくり
直美さんは大阪出身。学生時代は洋服に興味を持ち、高校卒業後はアパレル系の学校へ。20歳で上京し、念願だったブランドでアパレル業界でのキャリアをスタートさせました。
その後はフリーでデザインの仕事をしながら下北沢のエスニックバーでアルバイトを始めます。
昔からカフェ巡りや料理が好きだったという直美さん。この頃から「自分のお店を持ちたい」という思いが芽生えるようになりました。
そしてその思いを行動に移し、自身のカフェバーを下北沢にオープンします。
このようなデザインの仕事をしていた経歴は、雫の内装や空間づくりにも自然と現れているようです。中でも作家さんに依頼して特注したステンドグラスは直美さんのお気に入り。温かみや手作り感を大切にしたという空間には、細部にまでこだわりが伺えます。
手間をかけることで美味しく仕上げる
結婚と出産を経て一度はお店を畳むことに。それでも「もう一度自分のお店がやりたい」という気持ちは変わらず、2015年12月 白楽の街に「雫カフェ」をオープン。
当時はお食事メニューも提供していましたが、その後焼菓子とかき氷を中心にした現在の営業形態へと変え、2022年4月に「菓子工房 雫」として再スタートしました。
「毎日食べたくなる優しいお菓子を作りたい」
その想いが詰まったお菓子のこだわりを伺いました。

直美さん:「お砂糖にはすごくこだわっています。昔大好きなパン屋さんがあって、そのお店のクリームパンが、きび砂糖で作ったカスタードクリームを使っていたんですよ。その美味しさにもう感動して。
『お砂糖ひとつでこんなに味が変わるんだ』と感じてから、自分でお菓子を作るときにも優しい感じの甘さを追求したいなと思って、きび砂糖や、てんさい糖から作られるビートグラニュー糖を使っています。」

夏の間は焼菓子の提供がお休みに入り、かき氷のみの営業。
かき氷に入れるシロップや練乳、ジャム、あんこ、ゼリーに至るまで、なんと直美さんが一から全て手作りされています。

雫定番の味は「みたらしみるく」。あまじょっぱい味がかき氷と合うのだとか。
直美さん:「最近のかき氷って高級なものになってしまっていますね。あんまり高いと、なかなか気軽には食べられないじゃないですか。高級フルーツを使ったら必然的にお値段が上がってしまうのはしょうがないけれど、そうではなくても私は手間暇かければ美味しくなると思っているんです。
高級な材料を使うよりも、価格はできるだけ抑えつつ 手間をかけることで美味しく仕上げる。そうすることで、美味しいものを材料に見合った価格で提供できるようにしています。」
「常連さんはもちろん、 ”お洒落でふわっとしたかき氷” をまだ食べたことがなくて気になっている人にはぜひ一度食べてみてほしいです。」

ふわふわな氷の中にはクリームやジャム、ゼリーが入っていて食べ進めるのが楽しい!
街に”寄り添う”
─── お仕事をしていて嬉しいと感じるのはどんな時ですか?
直美さん:「純粋に『美味しい』と言ってもらえることが一番の幸せです。
お客さんはこの街の方が多くて、常連さんなんてお店におしゃべりしに来る感じ。
恋愛相談とか人生相談とかされて、おこがましいかもしれないけれど ちょっとアドバイスしたりして(笑)。
そうやって会いに来てくれることは本当に楽しいし、嬉しいです。
”街に寄り添うお菓子屋さん” になりたいと思っていて、そこにだんだん近づいているのかな。」
店名の『雫』には、「嬉しいときの涙や悲しいときの涙、いろいろな人のしずくを受け止める」という意味が込められているのだとか。

その想いの通り、お店に来るお客さんひとりひとりとの時間や会話を大切にしているからこそ、街の人々の心を掴んで離さないのでしょう。
菓子工房 雫 にainiko
取材中も場の空気を一瞬で和らげてしまうような、明るく朗らかな人柄が印象的な直美さん。
「今後、やってみたいことはありますか?」と伺うと
「将来、 ”かき氷おばあちゃん” になれたらいいな。
おばあちゃんになって腰が曲がりながらも、めちゃくちゃ美味しいシロップとか作っていたら、かっこよくないですか?」
と笑顔で答えてくださいました。
一見お茶目なその言葉の中には、
「これから先も本当にいいものを届けたい」「好きなことをずっと続けていきたい」
という、信念の強さが感じられました。
そんなまっすぐな気持ちから生まれるお店の味は、これからもきっと、街の人に愛され続けていくはずです。

こだわりの詰まった優しいお菓子と温かい空間に、つい心を開いてしまう。
そんな「菓子工房 雫」へ、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
菓子工房 雫
住所:神奈川県横浜市神奈川区六角橋1-16-1
Instagram https://www.instagram.com/shizuku_cashi/
