2023年11月1日にOPENする「妙蓮寺すいクリニック Sui Obstetrics & Gynecology」。妙蓮寺駅から歩いて3分ほど。多くの妙蓮寺住民の生活を支える「オーケーストア妙蓮寺店」のお隣に、新しく建設されたガラス張りのお洒落なビルの3階。大きな窓からは、妙蓮寺のシンボル菊名池公園プールが見える素敵なクリニックです。

クリニックの院長は、山本 ゆり子先生。
先日、ゆり子先生が開催した『ASK ME ANYTHING』。「受診するほどじゃないけどちょっと気になっているホルモンや生理に関するあれこれ、HPVワクチン、こどもの性教育どうしてる?などお話しししませんか。」と、“女性が安心して話せる場”を目的とした気軽なトークイベントでは、集まった女性の方たちが「こんなこと話すのはじめただけど」と、性に関する不安や疑問などを話されている姿が印象的でした。

診療ももちろんですが、ゆり子先生がこのクリニックでやりたいことは「待合室を女性の居場所」にすること。
普通の婦人科クリニックとは一味も二味も違う、新しい形のクリニックが誕生します。

2004年 国際基督教大学教養学部理学科卒 生物学専攻
2008年 岡山大学医学部医学科卒
2008年 浦添総合病院 初期臨床研修医
2010年 横浜市立大学附属病院 産婦人科
2012年 横浜労災病院 産婦人科
2014年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 助教
2019年 横浜市役所健康福祉局保健事業課に出向 がん検診事業や医療データーベース分析に従事
2020年 横浜市南部児童相談所に出向 こどもたちと向き合うと同時に職員に向けて産婦人科医としての専門的な助言を行う
2021年 横浜市立大学附属病院、横浜市立市民病院、および横浜労災病院の非常勤医師を経て
2023年11月より現職
文章:myourenjar 写真:myourenjar 構成:myourenjar
人間が人間を産む姿に感銘を受けた
─── そもそも、ゆり子先生が産婦人科の先生になろうとしたきっかけを教えてください。
ゆり子先生:「祖父が内科医の先生だったので、幼い頃から医師という職業に親しみがあったことは大きいかもしれません。中学生のときに手塚治虫『ブラックジャック』に出会い医師にあこがれを抱きますが、父親が理系の研究者だったので、漠然と理系の研究者になることを想像してました。
ただ、人を相手にする仕事の方が自分を活かせる職業なんだなと思っていたので、研究者としての道を選ぶことには違和感も感じていて。
結局、進路を決める頃まで明確な将来へのビジョンはないまま、大学3年生の夏から1年間カリフォルニアへ留学しました。」

「その時受講したカリフォルニア州認定助産師の特別講演で、彼女が介助した自宅出産の映像をみて衝撃を受けました。人間が人間を産むという、ものすごいエネルギーを感じたのと、自宅のベッドで家族に見守られながらの温かいお産は、当時の私にはとても幸せな画に見えました。
大学4年生で日本に帰ってきた頃には医者になることを決め、内科や精神科、麻酔科や耳鼻科など他の専門分野への選択も魅力を感じましたが、自宅出産の映像で得た衝撃が自分の中で大きく、やはりお産に関わる診療がしたいと産婦人科医へ進むことを決めました。」
子宮と卵巣だけ見れればいいわけではない
─── 沖縄県の病院で研修医としてのトレーニングをしたことがInstagramで紹介されていましたが、沖縄で研修を受けられたんですね。
ゆり子先生:「医師としての国家資格に受かったら、日本全国の病院の中から自分で決めた場所で研修が受けられるんです。住んでいる場所から近い病院を選んだり、都内の人気ある病院を選んだり、どこでトレーニングを受けるか迷いましたが、
医者たるもの、腎臓だけ心臓だけみればいい。というわけでなく、患者さんの全身を診ましょう。声を聞きましょう。というトレーニングが積める沖縄での研修を選択しました。」

「実際、患者さんがお腹が痛いから婦人科の病気だと思って受診されても、婦人科の病気ではなく盲腸である。という可能性もあり得ますよね。色んな可能性が考えられる。婦人科で診療していても婦人科医だけの知識では判断できないという場面は珍しくないんです。
患者さんの声を聞いて、全身を診て身体を触って、ありとあらゆる種類の病気の可能性を考えた上で判断する必要がある。婦人科だからといって患者さんの子宮と卵巣だけ見れればいいわけではないという意識は、そのころから強く持っていました。」
よい医師になるのは国民のため
ゆり子先生:「トレーニングをはじめる時、研修責任者の医師から『よい医師になるのは国民のため』という言葉をかけてもらったのですが、
その時の私には、かなりインパクトが大きい言葉で「わたしがこれからやっていく仕事はそういうことなんだ。」と目が覚める思いだったのをはっきりと覚えています。
患者さんのためというのはよく聞くけど、“国民のため”という言葉は、いい医者になりたいと思っていた私にドスンと落ちてきました。『上医は国を医し、中医は人を医し、下医は病を医す』という、中国の古い文献の有名な言葉にも通じていると思います。」
─── 患者さんのため、ではなく「国民のため」というのはどういう意味なのでしょうか?
ゆり子先生:「分かりやすい話ででいうと、性感染症。
患者さんが検査して、性感染症に感染していることが分かり薬をのんで、患者さん自体が完治したとしても、パートナーが性感染症に感染したままだったらまた感染してしまう。日本で多いのは性風俗。
その方のおかれている環境とか、パートナーとの関係。その方が性行為という方法でしか金銭を得られない生活をしている世の中の状況や、環境や貧困。
本当の解決という意味ではそこまで踏み込まないと、患者さんの診療、治療、完治ができないんです。」

「以前、新宿三丁目で若い女の子たちが集まるクリニックでアルバイトをしていたことがあるんです。受付の子も、待合室にいる子も20代で、医者も説教するようなタイプではなく、淡々と治療を受けられる。
受診する若い女の子たちも、説教されないクリニック、価値観を押し付けてこない場を探して選んでくるんです。それがいいかどうかは別として、治療をできる場があるという考えとしてはそういう場所は必要で。
ただ、働いていてとにかく自分の無力さを感じました。
回しているだけ。結局彼女たちの置かれている環境が変わらない。また彼女たちは同じ病気同じ状態を作り出してくることへの無力さを感じました。」
このクリニックを女性の居場所にしたい
─── ロゴマークも内装も、婦人科さんではないような雰囲気で驚きました。
ゆり子先生:「安心できる場所であってほしいという想いを込めて、ロゴマークを家にしました。例えば、白とピンクの内装で産婦人科は妊娠したら行く場所です。という感じにしてしまっては、さっき話したような子たちは来にくいと思うんです。
『妊娠したら行く場所=婦人科』という考えを変えたいという想いで色合いやロゴ、クリニックの名前も考えました。」

「児童相談所に出向したこともあったのですが、そこでは、自分の日常とはかけ離れて生きている子どもたちが沢山いることを目の当たりにして、全てに驚き、全てにオーバーリアクションをしてしまっていました。
周りの職員が淡々と対応しているのを見て、
『この子たちにはこの生活が日常。オーバーリアクションをしてしまうと話さなくなってしまうので、してはいけない』ということを知りました。
「こんな話をすると大人をびっくりさせてしまうんだ。隠さないといけないんだ。」と思ってしまい、話さなくなってしまう。なので、淡々と話しを聞いて淡々と手当をする。感情抜きで対応するべきだということが大切なことだということは、確かにその通りだと思い知らされました。
この子たちは日常を生きている。こっちが違う土俵にたった状態で、こうしろああしろと言っても単なる遠吠えなんですよね。
そんな無力さを感じる経験から、自分自身がするべきこと、できることは、話を聞いて人間同士の信頼関係を築くこと。であるのではないかと見えてきました。
信頼関係なしでは、その子の環境改善までにはつながらない。
もちろんそんなことを一診療所で提供できるサービスなのかといわれるとそれは違うかもしれないですが。」
「私はもちろんここで診療もするのですが、ものすごくやりたいことはこのクリニックを女性の居場所にしたいんです。
映画上映会してもいいですし、みんなでお話してもいい。性に関すること、夫婦関係のこと、性教育のことを安心して話せる場の提供をしたいと思っています。」

あなたの今の状況で医療が提供できる最適なソリューションを一緒に考える
─── 性のことについて話しにくい、いやらしいというような日本のタブー的考え方の文化は根強く感じますし、どうすればいいかわからない。本当は話したい。と思っている方が少なくないことを、先日の『ASK ME ANYTHING』トークイベントで感じました。
ゆり子先生:「みなさん、多くの不安や疑問を話されていましたよね。そんな場を作っていきたいと思っています。
自分の性器や身体はとても大切なもの。日本の性状況って教育では覆い隠されているけれど、インターネット上では興味を煽るいやらしい、汚らわしいという恥ずかしくて隠さなくてはいけないような、商業ベースの情報が多量に流れている。でも、本来性的には、性的なふれあいはコミュニケーションのひとつですよね。
性的なものに関するタブーを日の光にさらしたいという想いはありますね。ポルノグラフィーから性について学ぶという今の状況を変えたいと思っています。」

「あと、医療が女性の悩みを全て解決できるわけでもないんです。今多く耳にするようになったPMS(月経前症候群)だったらピルを飲めばいいという話があるけど、そもそもPMSの背景って女性が社会に担わされている重荷負担が大きすぎることも大きな要因だと思うんです。
あれもこれもそれも、まるで子どもなんていないかのように働き、まるで仕事なんてしないかのように愛情深く育てろみたいな、女性への負担の大きさの問題は医療が全て解決できるわけではなくて、家庭内労働をいかに家族で分担するかという内容になってくる。
最終的には社会を変えたいという想いがありますが、
ファーストステップとしてこれはおかしいよね。そりゃあホルモンバランスが乱れるよねということに気づいてほしいし、社会にもそういう目をもってほしい。
対話の土量をつくる。ただ診断と治療を提供するのではなく、そういう芽を育てたい。」

「私もスタッフも、ジャッジメントはここでは絶対にしません。
今おかれている状況とか、見えない背景っていっぱいあるし、想像できないこともいっぱいある。人間がある行動をとることに対して、批判したり、間違っているとか『言うことはすごく簡単』だと思っています。
そういうジャッジメントはここでは絶対にしない。
あなたの今の状況で医療が提供できる最適なソリューションを一緒に考える。
単純にAだったらBすればいい。というものではないので、その方にとって一番現実的な落としどころを見つける。もちろん患者さんもその提案をのむ必要もないというか。
医療で解決できることって、実は少ないのかもしれません。」
妙蓮寺すいクリニック
Sui Obstetrics & Gynecology
HP:https://www.suiobgyn.org/
住所:222-0011 神奈川県横浜市港北区菊名1-9-10 高貝ビル 3F
Instagram:https://www.instagram.com/sui_obgyn/
