学芸大学駅から徒歩7分。閑静な住宅街に、自然食品を扱う「五風十雨(ごふうじゅうう)」はあります。
五風十雨の責任者を務め、スタッフとしても店頭に立つ小山さん。そんな小山さんと私が初めて出会ったのは、学芸大学ではなく、“大倉山”でした。
私が大倉山のブックカフェ「élever(エルヴェ)」という場所でスタッフをしていた当時から、小山さんはéleverで朝カフェや、ちょっとしたイベントを開催してくれていたんです。
éleverで小山さんと関わるうちに、読書家なこと、一児のパパであること、世界を一周した時のこと、甘いものに目がないことを知ったり。
小山さんがéleverでイベントをしたり、地域に積極的に関わる姿を間近で見ている中で、この人はどんな人なんだろうという興味が湧き、今回お話を伺わせていただくことになりました。
文章:amkadowaki 写真:myourenjar 構成:myourenjar
ナチュラル・ハーモニーの精神を継ぐ自然食品店。
「五風十雨」は“ナチュラル・ハーモニー”という自然食品の会社から派生して生まれたお店。店内には、食品に限らず生活に関わる幅広い商品が陳列されています。
───自然食品とは言いつつ、並んでいる商品が幅広い印象を受けました。ホームページには「ナチュラルライフをデザインする」と記載されていましたが、食品に限らず「生活」と表現するのはなぜですか?
小山さん:「まず、業界の中でも大きく違うところは、自然界に軸を置いてること。簡単に言っちゃえば、世の中の自然食品店が『知性で選びましょう』というところを、ナチュラル・ハーモニーは『感性で選びましょう』と言っているんです。」
───「知性」というのは、例えば「1日分のビタミンが取れるサプリメント」とかそう言うことですかね?
小山さん:「そうそう、『サプリメントって必要なのかな?』ってその生活自体に疑問を持ってしまう。だから『その生活を変えてみよう』みたいな。そういった流れで、生活提案なんです。
ビタミンが足りないのはなぜだろう、というところを考えていきたいです。対症療法をするんじゃなくて、根本的な療法をしましょうっていう。」
「あとは『自然か不自然か』で判断するライフスタイルがものすごく楽でした。
1日にビタミンは何gとらなければいけないとか、よくわからなくて。だって、私とあなたは違うし、自分の気分によっても違ってくる。たしかに傾向としては正しいと思うけれど、それがその人にとっての正しさかと言ったらそれは違うし。
正しい・正しくない、良い・悪いとかで話し始めるとどんどん分からなくなっていくから、やっぱり自然界を軸にして、自然なものをより多く、不自然なものをなるべく摂らない。それで良いじゃん、って思うようになりました。」
「自分自身も、甘いものが大好きなんですが、そっちが多くなると体に支障が出てきたりするので、普段の食事はなるべくより自然なものを食べるようにしています。その分、たまの外食や嗜好品は何も問いません!というスタンスです(笑)」
───ナチュラルハーモニーの考え方が小山さんにとっての心地よいライフスタイルとマッチしたということですね。
つくり手とつかい手、「つなぎ手」としての役割
小山さん:「ありがたいことに、つくり手(生産者さん)とつかい手(お客さま)の両方と繋がれる、つなぎ手として育ててもらったので、つなぎ手として何が出来るかなっていうのは思います。
考え方であったりとか、精神的な部分にも、落ち着いて穏やかで居られることも大事なことだと思うので、そういうのもゆっくり伝えられたらいいなと思っております。
『あなたの中のちゃんとした安心・安全・健康・おいしい』とかそういうものを作るための提案ができるといいかな。」
───そのつなぎ手としての役割は、小山さんの暮らす大倉山での活動でも発揮されていると感じます。
小山さん:「大倉山は、たまたま『カラフル』という、まちのイベントに出店させてもらって、それを機に色々なお店さんと繋がりができました。
それから、地域で自分ができること、お金を落とすことが一つだけど、他にプラスアルファで何かできればと思っています。」
───éleverで開催している「味噌汁のむかい」は、五風十雨の商品を使ったおにぎりやおかずを食べながら、みんなでお話ししましたね。それは何か意識していることはありますか?
小山さん:「場作り。そんな想いで朝カフェをやらせてもらっています。ただ自分が居たいのもありますが(笑)
自分からこうしようみたいなものは無くて、その場で出来ることがあればしますという感じです。場があれば、なるようになると思っているんですよね。」
「15年くらいこの業界いるんですが、自然食品を食べて、その良さ気付けない時も未だにあるんです。だけどやっぱり、ふとした時に『また食べたいな』って思えるんですよね。
『味噌汁のむかい』とかはそういった経験の入り口にしたいです。『あの海苔美味しかった』とか『あのご飯美味しかった』って思ってもらえれば嬉しいです。
喉の通りがいいとか、違和感を感じないとか嫌じゃないとか。日々ご飯を食べるってそういうことの方が大切だったりしますね。」
地域について思うこと。
小山さん:「大企業のチェーン店がたくさんある世の中で、それでも良いんですが、地域のカラーが無くなっちゃうのは画一的になるしつまんないと思ってしまいます。
大倉山は個人店が元気がある地域だと思うんです。各駅停車の駅で、地域的な要素もあるのかもしれませんが、集まる皆さんの教養とか文化のレベルも高いから個人店を使うのもある気がしています。
その中で、個人店が残ってほしいし、その一助になれば。
感覚としては町内会で何かをやる時に、稼ぐって感覚ないじゃないですか。その感覚ですね。町内会で何かするのにちょっと何かするっていう感覚で携わってる感じです。」
───小山さんのギブ精神、とても素敵です。その考え方のルーツは何でしょうか?
小山さん:「自分の中に、もらったなって確かな感覚があるんです。親になった時に、自分の親からたくさんもらったなとか、ちょっと立場が変わった時に与えられたものをすごく感じて。
自分がもらったものを返せる場を探した結果、今そうなっているのかもしれないです。」
ここのお店を始めるときも、お客さまから寄付をいただいてイタリア(の生産者に会いに行くツアー)に行った時も、自分1人の力じゃ出来なかったけど、誰かが手を出してくれてそうなった。
そういう感覚を多く得ちゃってるから、自分で頑張るよりも、人に助けてって言える何かの方が、そして人に助けてって言われて何かする関係の方が、個人的には腑に落ちているんです。」
私から見た小山さん
小山さんの第一印象は「お手伝い」と「哲学」の人。
私がéleverにいた頃、朝カフェやイベントがない日にもよく顔を出してくれました。
企画しているイベントについて相談すると、「一緒にやろう」と言ってくれる。他にも、お互いの読んでいる本についてや、日々の気づきを話したり。
この対話の時間は、私にとってとても大切な時間でした。
取材を通して改めて感じたことは、お店の在り方と小山さん自身の生き方がリンクしているということ。
商品のセレクト、地域との関わり方、子育てに至るどんなテーマにおいても、どこか哲学的。それは「自然か、不自然か」が常に根底に存在しているから。どこまでも一貫しているけれど、それを決して押し付ける様子もなければ、ストイックさを感じさせないところもまた自然なんです。
そんな小山さんに、ぜひ会いに行って、話してみてください!
五風十雨(ごふうじゅうう)
Instagram:https://www.instagram.com/gofuju/
住所:〒154-0002東京都世田谷区下馬6-15-11小林ビル1階