東急東横線の大倉山駅から大曽根商店街へとつながる道を歩くこと5分。
“いつもよりスピードを落として、
今、ここにいる自分自身を感じてほしい。
いっしょにいる大切な人を感じてほしい。”
そんな想いから生まれた「喫茶ありをり」を営むご夫婦、本間達哉さん、本間智子さんに会いにいきました。

筆者がありをりを訪れるのは2回目。
初めて訪れたのは、今から半年ほど前の6月2日(日)。天気:雷&豪雨。
土砂降りのなかお店に着くと「ゆっくりしていってくださいね」と声をかけてくれたご夫婦。
初めてなのに心地が良くて、温もりを感じる空間。
ここは単なる喫茶店ではない。
木曜日から日曜日、週4日間限定でオープンする「ありをり」の魅力に迫ります。
文章:arikanami728 写真:myourenjar 構成:myourenjar
からだに優しい「卵と乳製品を使わない」お食事とおやつ
ありをりのお食事といえば、豆乳のフリカッセ。
フリカッセは、フランスのロワーヌ地方の家庭料理で「白い煮込」のこと。
通常は、生クリームを使用しますが(生クリームは最後に入れるため煮込まないようです。)、喫茶ありをりでは豆乳を使い、小麦粉の代わりに米粉を使ってなめらかに優しく仕上げています。

フリカッセに添えられた柚子胡椒が優しいあじわいにアクセントをもたらします
ご夫婦に強いアレルギーがあるというわけではありませんが、からだに負担がからない、疲れない料理を提供したいという想いがありました。
そのきっかけになったのは、達哉さんが以前受けた“遅延型アレルギー検査”でした。
卵と乳製品が合わないことが分かり、3か月くらい断ったそうです。当時はスイーツを食べたくなっても卵と乳製品を使っていないスイーツが売っていなかったので、レシピ本を見ながら自分で作るようにもなりました。
再検査をしてみると、アレルギー値の低下はもちろん、体重が5kg減少し、からだの調子もよくなりました。そんなことから、お店を開くときは、からだに優しい卵と乳製品を使わなくても美味しくいただける料理を提供しようと決めました。

メニューにある単品の半分サイズのおやつを自由に3点選べる「おやつ3点セット」
卵と乳製品を使わないと物足りない味なのでは?と思う方もいるのではないでしょうか。
ありをりのお食事とおやつはそんなことありません。
看板メニューのフリカッセは、塩麴でつけた柔らかい鶏肉を、豆乳と米粉でじっくり煮込むことでなめらかで濃厚なあじわいに。おやつのさつまいもと栗の米粉ケーキは、もっちりとした食感と果物の自然な甘さが口いっぱいに広がり、からだに優しくて、こころも満たされる一品です。
居心地の良さを追求した温もりある場づくり
ありをりでは、憩いに来る方、食事に来る方、読書をする方など、お客様が思い思いの時間を過ごしています。時には居心地の良さから居眠りをしてしまう人もいるのだとか。
優しさが詰まった味わい深い料理
温かみのあるオレンジ色の明かり
本好きの店主おすすめの本棚
穏やかに流れる音楽
木のぬくもりを感じる机や椅子
ありをりの「場」は、居心地の良さを追求したご夫婦のこだわりがぎゅっと詰まっています。


喫茶ありをりのメニューには、「ありをりからのおたより」という店主からのメッセージとともに、「ありをりへのおたより」というお客様が記入できるメッセージカードがあります。
「ありをりへのおたより」を始めるきっかけとなったのは、あるお客様が置いていった小さなメモでした。そのメモには「とても良い時間を過ごすことができました」と書かれていました。
ご夫婦はそのメモを見てとても温かい気持ちになり、お店からのメッセージだけではなく、お客様からのメッセージも受け取れるようになると嬉しいと感じ、「ありをりへのおたより」が誕生しました。

スープメニューは「ありをりへのおたより」に書かれたお客様のご要望で誕生しました
メッセージには、お食事やおやつの感想を書いてくださる方もいれば、
「尊敬する上司が亡くなってしまったので癒されに来ました」
「闘病中でなかなか来れなかったけれど今日は来れて嬉しかったです」
「子どもが生まれてから初めて一人でほっとする時間が持てて元気になりました」など
内なる想いを綴られる方もいらっしゃいます。
ありをりへのおたよりは、対話を大事にしているありをりにとって、“お客様と店主をつなぐ大事な架け橋”になっています。

仲良しの秘訣は、お互いの得意なこと・苦手なことを分かった上で補い合うこと
日常生活の中に彩りを届けたい
ありをりでは、月に一度、お花やフルーツを販売する「フラワー&フルーツマルシェ」を開催しています。2023年3月から始まった、NATSUMEさんによる店頭でのお花の販売に加えて、フルーツ倶楽部のimeotiさんによる季節のフルーツ、さらに2024年からは、お米と糠のおやつ屋けせらせらさんがつくる焼き菓子が販売される人気のイベント。
こだわりのお花やお菓子、選りすぐりのフルーツを求めて、ご近所の方だけでなく遠方より来てくださる方も。
毎回楽しみに来られる方、イベントを通して親しくなった人たち、出産前から来てくれていた方が出産後も赤ちゃんと一緒に来てくださる方など、思い思いに、心穏やかなときを過ごしています。

「月一のプチマルシェや、ライブなどイベントが、日常の生活の中に潤いや、寛ぎや、愉しさを取り入れるきっかけになれば、という気持ちとともに、それを販売する人そのもの、演奏されるその人自身の魅力を伝える場所でありたい」と智子さん。
ありをりでは、お客様とお店、人と人、人とまちをつなぐきっかけを創っています。
ありのままの自分にainiko
初めて訪れた半年ほど前から感じてたありをりの心地良さが忘れられず、今回取材させていただきました。
仕事や家事、悩み事や相談事など、色々なことに追われる毎日だけれども、ありをりに来た時は、ありのままの自分を認めることができます。
それは、達哉さん、智子さんが背伸びをせず、足を運んでくれたお客様をまるごと優しく受け止めてくれるから。程よい距離感で対話を重ねてくれるから。
そうなんです。
ここは単なる喫茶店ではなく、
1人で来た人も、
複数で来た人も、
ここにいるみんなが一緒にいて心地よい空間。
「『ありをり=一緒にいますね』」を感じられる唯一無二の場所。
ぜひ、みなさまもありをりの心地良さをあじわいにいってみませんか。

喫茶ありをり
住所:〒222-0003
神奈川県横浜市港北区大曽根1-9-9 1F
アクセス 東急東横線大倉山駅西口より徒歩5分
HP https://www.ariori-to-yururi.com
